こんにちは!
発達障がい支援センターの黒瀧素子(くろたきもとこ)です。
子育て中のあなたは、『ギフテッド』という言葉を聞いたことはありますか?
『ギフテッド』にどのようなイメージがありますか?
IQが高い人?
勉強がものすごくできる人?
運動神経がものすごくいい人?
何でもできる人?
最近『ギフテッド』という言葉を耳にすることが増えてきました。
『ギフテッド』とは生まれつきとび抜けて記憶力が良かったり、集中力がものすごくあったり、好奇心がとても旺盛だったり、強い探求心や独創性を持っていたりする人のことです。
『ギフテッド』 の語源はGiftつまり贈り物。天からとびぬけた才能をさずかった人、という意味合いです。
一般的に言われているウェクスラー式の知能検査等でIQ(知能指数)130以上の人がギフテッドとするとおよそ人口の2.5%程度になります。でも、IQを基準とするだけではなく、芸術的才能や音楽的才能、運動能力などを含めて考えるとまたちがってきます。『ギフテッド』に明確な定義というものはありません。海外ではギフテッド教育のプログラムを実施しているところもありますし、日本でも渋谷区などで一部取り組みがはじまっています。
2022年には文部科学省もギフテッドに対する有識者会議を開いて、”特異な才能のある児童生徒を含む全ての子供たちが、多様性を認め合い、高め合える包摂的な学校教育環境の中で、それぞれの資質・能力を伸ばしていけるように”とこれからの日本の教育についてまとめられました。詳しくはこちら。
ギフテッドのOE(過度激動)
ギフテッドにはOE(過度激動:Overexcitability)と呼ばれる特徴が比較的多く見られるといわれています。超活動性とか過興奮性と呼ばれることもあります。これは一般的な人と比べて過度に大きな感情や行動を示す状態のことです。
このOEと呼ばれる特徴のためにギフテッドの子どもたちは、平均以上に敏感な精神状態なので、多くの人が自然に受け入れることができるような外部からの感覚情報にも強く反応してしまいます。OEがあることで人生が彩り豊かになるということもありますが、その反面、当事者のお子さんの自己理解や対処がうまくできないと困り感として現れてしまい、周りの子たちから浮いているように感じてしまっり、学校にいるのが辛くなって不登校になってしまったりと、社会に出てからも生きづらさにつながっていくことが起こっています。
過度激動はポーランドの精神科医であるカジミェシュ・ドンブロフスキが提唱した概念です。ドンブロフスキは過度激動の性質を精神運動性過度激動、知性過度激動、感覚性過度激動、想像性過度激動そして感情性過度激動の5つの分野に分類しています。それぞれについて詳しく紹介していきたいと思います
①精神運動性OE(精神運動性過度激動)
一般的に「落ち着きがなく頭の回転が速い」印象を与えるもの。
身体的多動だけでなく、話すスピードが速い、話が一気に飛躍する、頭が働いて眠れない、という精神的多動を示します。
②知性OE(知性過度激動)
一般に広く知られているギフテッドの特徴としてよく知られる性質になります。
多くの知識を求めて、新しい意味を見出し、疑問を追求、理論的な分析や真実の探求を愛します。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、頭脳パズル、知覚・論理ゲームを好む傾向が見られます。
③知覚性OE・感覚性OE(知覚性過度激動)
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のどれか1つもしくは複数がとても敏感で、光や音、感触などに感覚器官が受ける刺激に過剰に反応します。日常的な光をまぶしく感じる、外出しても人や車・音楽などの様々な音が耳に入り疲れてしまう、服のタグや縫い目がチクチクして苦手、食物の食感や匂いに敏感で食べられないものが多いなどの例が挙げられます。
美しい文や音楽・芸術・食べ物などに強く感激したり喜びを感じる感覚も人一倍増幅されるという特徴があります。
④想像性OE(創造性過度激動)
強い想像力を持ち、詩的表現を好みます。枠にとらわれず自由な発想ができ、独創的なアイデアを生み出します。白昼夢を楽しみ空想の世界に入り込んでしまい、授業に集中できず注意散漫と捉えられてしまうことも。ワクワクすることを想像すると落ち着きがなくなったり、見た夢にいつまでもこだわったりする子どももいます。またイマジナリーフレンドと呼ばれる想像上のお友達がいるお子さんもいます。これは幼少期だけではなく小学校入学以降も続く場合があります。
⑤感情性OE(感情性過度激動)
喜怒哀楽が激しく、感情の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示します。より楽しみ、より悲しみ、より腹立ち、より驚き、より恐れます。共感力が高く、悲しい曲や物語でも深く感情移入し、強い悲しみや辛さを感じてしまうのです。
責任感や自省意識も非常に強い傾向にあり、成長するにつれてストイックで自分に厳しくなる人や、不正や差別など不公平な事柄に強い憤りを感じる人も少なくありません。ある程度の人生経験を持つギフテッドには、相手の気持ちを鏡のようにリアルタイムで読取り、共感する人もいるのです。
以上5つのOEの種類を紹介いたしましたが、ギフテッド全員にOEがあるわけではありません。また、OEが見られる人でも5つの性質のうち一つだけを持っているあるいは複数持っているなど種類や程度も人それぞれです。OEはギフテッドによく見られる性質ではありますが、OEがあるからギフテッドというわけではありません。
OEの特に感情や行動の激しさといった特徴から本人にとっては大いに振り回されていて困っている状態だとしても、周囲から見たときに単なるわがままや癇癪またしつけ不足などと捉えられてしまうケースもあることをぜひ知ってください。
精神運動性OEはADHDの多動性に似ているところがあります。また、感覚性OEがASDの感覚過敏と似ているところがあります。
また、ギフテッドと発達障害両方の特性を合わせ持つ人のことを2E(Twice exceptional)といいます。
ギフテッドのOEや発達障害の特性があることで、生きづらさや様々な困りごとが出てくることがあります。
小さいうちはお子さんの特性を親御さんが理解し、成長につれてお子さん自身が自分の特性を理解し、自分とうまくつきあっていけるように支援をしていきましょう。
また、ギフテッドの才能を伸ばしていくためは、家庭での接し方もとても重要です。特性に合った環境を整えてあげてくださいね。