発達障がい支援センター
真鍋良得です。
発達障害がある人の中には、相手の指示通りに動けない、相手の言っていることの意図がよくわからないことがある、という方がいます。
また、発達障害がある人との関わりの中で、こちらの意図を十分に理解してもらえないと感じることがあるという方もいます。
自閉症スペクトラムの人はあいまいな表現が理解しづらいことがあります。
例えば、こんな場合です。
「あれ持ってきて」と言われて「あれ」が何かわからない。
「ちょっと多めにして」と言われて「ちょっと」がどのくらいなのかわからない。
「トイレに行ってくるから火にかけてる鍋を見ていて」と言われて「見ている」だけで、鍋から汁がふきこぼれていても何もしない。
「あれ」と言われて「あれ」が何かわからなければ聞けばいいのではないかと思われるかもしれませんが、自閉症スペクトラムの人の中にはそれを聞くことができない人がいます。
聞くことができない理由としては次のようなことがあります。
・自分が「あれ」が何かを理解できていないこと自体が理解できていない。
・幼いころには聞いていたけれど親や先生に「いちいち聞くな」「みんなそれだけ言えばさっさとやるのになんでお前はわからないんだ」と聞くたびに怒られているうちに聞くことが怖くなって聞けなくなった。
自閉症スペクトラムの人は、相手の思っていることが理解できていないのは自分だけなんだと思っているかもしれませんが、実は発達障害のあるなしに関わらず相手の頭の中なんて誰も理解できません。
多くの人は周りの人と思考パターンが似ていたり自分以外の人の様子を興味を持って見ているので相手の思っていることを推測しやすいのですが、自閉症スペクトラムの人は周りの人と思考パターンが異なっていたり自分以外の人にあまり興味がわかないので相手の様子を見ていないから相手の思っていることを推測するのが難しくなります。
自閉症スペクトラムの人は、自分の特性を理解し、怖くても失礼だと思っても、相手が何を思っているのかを聞くということを意識しましょう。
聞いて怒られることがあるかもしれませんが、聞いて怒られることよりも、聞かずに「はい」と返事して相手の意図しない結果になって怒られることの方が多いはずです。
上手に聞く方法としては、相手に何か言われたときにはまず「おうむ返し」で相手の言葉を確認して、質問するといいでしょう。
「あれ持って来て」と言われてすぐに「あれとは何ですか?」と聞くより、「あれ持ってくるんですね」とそのまま言葉を返してから「あれとは何ですか?」と聞く方が、相手は自分の言葉を聞いてくれていると気う気持ちになるので、不快な気持ちになりにくいのです。
発達障害がある人と関わる人は、何かを頼む時には、「沸騰したら弱火にして」「ふきこぼれそうだったら火を止めておいて」といった具体的な表現を使うと理解してもらいやすくなる、ということを意識しておくといいでしょう。